2013年3月26日火曜日

Ibuprofeno

ずっと書こう書こうと思いつつ書いていなかった面白いテーマがあります。それは薬の服用について。

わたしは薬をほとんど飲まずに育ってきた健康優良児だったのですが、大人になってからは手放せない薬が二つあります。一つは抗ヒスタミン剤、もう一つは鎮痛剤のイブプロフェノ。大学2、3年生だったある水曜日、突然蕁麻疹に襲わました。それ以来、症状の軽かった数年間を除いて、毎日抗ヒスタミン剤のお世話になっています。それに加えて腹痛対策のイブプロフェノを月に1、2日。

スペインで生活するからにはスペインの市販薬を買って服用することになるわけですが、そこで疑問が生じるわけです。薬の服用量は何によって決められているのだろうか、ということ。海外で生活している人なら誰でも一度は疑問に思ったことがあるはず。

というのも、例えばイブプロフェノの含有量には、日本の市販薬とスペインの市販薬とではびっくりするほどの差があるんです。わたしはパッケージマニア(?)で、どんなものでも買う前・買った後にしげしげとパッケージを眺めて原材料・内容物などを確認するのが好きなのでよく覚えているのですが、日本で数年間にわたり愛用していた某鎮痛剤のイブプロフェノ含有量は144mg(ちなみにこれが一番効くと薬局でお勧めされたので選んでいたのですが、前回の帰国時に他メーカーの鎮痛剤の方が含有量やや多めの150mgだということに気付いたので、それに切り替えてみました)。説明書によると、服用は最短4時間おきで、上限は1日3回まで(合計約450mg)とのこと。もちろんそれを厳密に守って服用していたのですが・・・・・・・・・・・・・・

数年前、スペイン人と話していて鎮痛剤が話題に出た時、彼女の言葉を聞いてびっくりしました。彼女曰く、薬は少ない方がいいから容量の少ない鎮痛剤を選んでいる、ということだったのですが、その少ない容量とは400mg!文字通り、耳を疑いました。スペインで市販されている鎮痛剤はなんと、400mgと600mgの二種類だというんです。わたしがびっくりして、日本のは150mgだというと、今度は彼女がびっくりして、それじゃ子供用より少ないじゃん!という反応。日本の鎮痛剤は子供は服用不可と書いてあるので子供が服用できるという事実にまず驚いたのですが、その服用量を聞いて更に驚きました。スペインでは子供は200mg服用することになっているんです。


そんなわけで、日本から持参していた鎮痛剤がなくなってスペインの薬局に初めて買いに行った時200mgのイブプロフェノを頼むと、一軒目では200mgなんて取り扱いがないと言われ、二軒目では400と聞き間違えされた後に不思議そうな顔で『でも200mgしか服用しないの??』と逆に質問される始末・・・。どこの薬局でも意外そうな反応をされてしまいました。結局、購入したのは、その存在を知らなかったかのような感じで奥から持ってきた『粉末タイプ(=飲みにくい)ならあったけど・・・』というのと、『ソフトキャンディタイプ(=お子様用)ならあるけど・・・』というもの。粉末は場所を選ぶし、キャンディタイプは単価が高かったので、それらに加えて"普通の"400mgの錠剤も買って、半分に割って服用しています。

そんな経験から、200mgの需要のなさを実感するとともに、日本での容量との差があまりにも大きすぎるために、上に挙げた疑問が湧いてきたわけです。薬の服用量って、何によって決められているんだろう・・・・・・。

手持ちのイブプロフェノ400mgの説明書によると、1日の推奨服用量は1200mgで、可能最大服用量はその倍の2400mg(!)。1回の服用量が日本の基準の約1日分相当で、その三倍も服用するものだとは・・・。ついでにレモン味の子供用イブプロフェノ200mgの説明書では、6~9歳(体重20~28kg)は1回200mg(最大600mg/日)、10~12歳(体重29~40kg)も1回200mg(最大800mg/日)、12歳以上のティーンエージャー以降は1回200~400mg(最大1200mg/日)、となっています。

まず頭に浮かんだのは、体格によるということ。でもスペイン人の骨格や身長体重は日本人と大して変わらないので、あまり重要ではなさそうです。だいたい、体重40kg以上の子供が日本基準以上の200mgを服用できるという時点でこの仮説は崩れますよね・・・。

次に考えたのは、人種によるということ。髪や皮膚の色が違うように、内臓なんかの機能力も違うのかもしれない。でもそれが重要なことだとしたら、人種のるつぼが顕著であるアメリカやオーストラリアなどでは、それぞれの人種向けに特化された市販薬が売られているの???まさかとは思いつつも気になったのでアメリカ人に聞いてみたら、やっぱりというかもちろん、そんなことはありませんでした。どの人も同じ薬を同じだけ服用しているみたいです。

スペインでは、身長155cmの学生が1日1000mgを超えるイブプロフェノを服用でき、日本では身長175cmの学生が500mg以下のイブプロフェノしか服用できない。アメリカでは、アジア系アメリカ人もアフリカ系アメリカ人もヨーロッパ系アメリカ人もラテン系アメリカ人も、みんな同じ薬を飲んでいる。・・・・・結局、"最大可能服用量"って、なんなんだろう?

わたしがもし日本国内でしか生活していなかったとしたら、日本の説明書が指示する通り、150mg×3回の限度が絶対値で、それを超えたらきっと体に不調をきたすはずだからそれ以上服用しようなんて間違っても思わなかったはず。でも日本を出て、よその国では自分の年齢の半分にも満たない子供が自分より多く摂取していることを知ったら・・・それまでの絶対値はもはや絶対値ではなくなりました。わたしは今、日本では市販されていなかったイブプロフェノ200mgを1回量にしています。(※2012年度末に一時帰国した時、新発売だという200mg/回タイプの市販薬を見つけました)身長も体重もおよそスペインの平均値であるし、食生活もスペイン人とあまり変わらないし、何より服用後に気分が悪くなったり副作用が現れるわけではないからです。薬の力には極力頼りたくないけれど、痛みに苦しんで丸一日をダメにするよりは断然いいと思ってのことです。かといって、周りのスペイン人同様、400mg(ましてや600mg)は服用しようとは思いません。わたしにとってイブプロフェノは不可欠だし、正直なところ日本の市販薬では物足りないと思っているけれど、安易に量は増やしたくないのも本音です。

処変われば常識も変わる。薬の服用量は勝手に変えてはいけないというのが基本だけれど、基準値があってないようなものだと知った今、最終的には個人個人がきちんと判断するしかないのかな、なんて思っています。もちろんすべての判断は自己責任で、ということになりますが。そもそも基準値って、各国政府が決めただけのものなんですよね。合法だと政府から認められているタバコだって、摂取するしないは個人の判断で決めることで、それとなんだか似ているように思えます。合法だから好きなだけ吸おうという人、タバコは合法だけど吸わないで、健康への害が少ないからとマリフ○ナを吸う人・・・(実際どうなのかわたしは知りません。が、スペイン人の口からこんな言葉を聞くことがあります)。

外国に住んでいると、気にも留めていなかった物事について考える機会が多く与えられます。いちいち考えて、悩んで、選択するのは大変だけど、そんなことも人生をよりよく生きていくのに役立っているのかなぁ、なんて思うと、幸せなことだとも思えます。

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